2013年07月20日

銚子・高崎・英学校(1)

美加保丸事件の最前線で事にあたった、銚子陣屋の郡奉行・土方景尉(ひじかた・かげい)。
いったいどんなお咎めを受けたのか気になるところですが、そのことを書いた資料は見当たりません。

ただ、藩主・大河内輝聲の謹慎が解けた後の十月二十二日、菅谷清允(すげのや・きよみつ?)という人が、新しい郡奉行(民政総裁)として着任しています。
おそらく土方さんは国元へ戻され、それ相応の処分が待っていたであろうことは想像できます。

一方、着任早々の菅谷清允のもとでは、またもや銚子沖でフランスの船が難破し、銚子港に漂着するという出来事が発生します。
しかし、きっと前任者の轍を踏まぬよう慎重に取り扱ったのでしょう、特に騒動に至ることはありませんでした。

銚子・高崎・英学校(1)漂着したフランス船には、ダラス(Charles Henly Dallas)というイギリス人の貿易商が乗っていました。
ダラスは上陸して、菅谷家に滞在することとなりました。

この時、菅谷ダラスに頼んで、菅谷家の子弟のほか数人の高崎藩関係者に、英語を指導させています。

これに味を占めたのか、しばらくしてダラスは東京に出て本格的に英語を教えようと、築地に英学校を開きます。
菅谷清允の長男(養子)・正樹もここに入学し、引き続きダラスに英語を学びます。
そして明治三年(1870)五月、ダラス大学南校(だいがくなんこう:後の東京大学)の英語教師として迎えられるのです。

ダラスは学校前の官舎で暮らしていましたが、もう一人、リング(Augustus R. Ring)というイギリス人の英語教師もいました。
そしてそこに、丹波柏原(たんば・かいばら)藩士の小泉敬二という人が、得業生(とくごうしょう)として同居していました。
今日の大学院生と教官の間のような立場の職員

就任間もないある日、このダラスリングそして小泉が、外出先の神田鍋町で攘夷浪士に襲われるという事件が起こります。
ダラスは肩に一太刀、リングは肩と背中に二太刀の傷を負いますが、近くの紙屋へ逃げ込んで一命を取り留めることができました。
小泉は、無傷で逃げのびられました。

東京で起きたこの事件が、後に再び高崎と結びつくことになるのですが・・・。
その話の前に、この事件の詳細について少しお話をしておきたいと思います。

ただこれは・・・、少々複雑な話でありまして、長くなりそうなので次回のお楽しみということに。





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Posted by 迷道院高崎 at 07:12
Comments(6)高崎藩銚子領
この記事へのコメント
難破船に乗っていた人が英学校を開き、攘夷浪士に襲われるとは・・・人の運命というものは不思議なものですね。

大学南校の解説に「開成学校」とありますが、現代の開成中学・高校の名前の由来は古代中国の書にある「開成成務(人々の知識を開いて世の中の事業を成就させること)」からきているようなので、大学南校とは関係がなさそうですね^^。
Posted by 風子  at 2013年07月20日 09:31
>風子さん

遭難ですよ、あ、いや、そうなんですよ。
人の運命も不思議ですが、人の縁もまた実に不思議で、このあとの展開をお楽しみに。

「開成」は「開成成務」という言葉から来てたんですかー。
昔の人は、名前ひとつ付けるにも教養が感じられますね。
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2013年07月20日 15:38
「開成成務」ではなくて、正しくは「開物成務」でした。失礼致しました。<m(__)m>
Posted by 風子  at 2013年07月20日 20:15
高崎や前橋など西毛は内陸部ですが、早くから英語学校を開設したり留学生を輩出したりと開明的だった歴史がありますね。

横浜と縁のあった時代以前に、銚子での経験が海外に目を見開く下地になったのかも知れないと今回思いました。
Posted by ふれあい街歩き  at 2013年07月20日 20:22
>風子さん

これは、ご丁寧に。
不勉強で、全然気づきませんでした(^^ゞ
勉強になります。
ありがとうございました。
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2013年07月20日 21:19
>ふれあい街歩きさん

あー、そういう事なのかも知れませんね。

漂流者がイギリス人ということで、すぐ英語を教えてもらおうと考えるあたり、すでに問題意識を持っていたのでしょうね。
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2013年07月20日 21:27
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