早い梅雨入りです。
こんな時は、本でも読んでみましょうか。
漫画ばっかり読んでた小学生の頃、仲良しだったE君の家に遊びに行くと、
「SFマガジン」という、字だらけの本が並んでいて、
「すげ~な~。」と思った記憶があります。
「面白いから読んでみ。」と言われて、借りて読んでみるとこれが面白い!
特に面白いと感じたのが、
星新一のショートショートでした。
そんなことで一時期、
星新一作品を好んで読み漁ったのですが、そのほとんどを忘れてしまっていました。
しかし、ひとつの作品だけは憶えていたのです。というより、突然思い出したという方がいいのかも知れません。
もう一度読んでみたいという気持ちが強くなったのですが、作品のタイトルが思い出せません。
うろ覚えの内容から、
「星新一 空から声」とキーワード検索をしてみました。
←で、出てきました。
「おーい でてこーい」という変わったタイトルだったんですね。
早速、新装なった高崎市立中央図書館の児童書コーナーから借りてきました。
改めて読み返してみると、実に深~~~い内容の作品でした。
ご存知の方も多いのかも知れませんが、ショートショートをさらにショートにして、あらすじをご紹介。
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都会からあまり離れていないある村。
台風の去った翌朝、崖崩れで流された小さな社のあとに、直径1m位の穴が開いているのを発見する。
村人が覗き込んでみると、中は暗くて見えないが、とても深い感じがした。
若者が
「おーい、でてこーい。」と叫んだが何の反響もない。
「ばちが当たるかもしれないから、やめとけ。」と老人が止めるのも聞かず、若者は石ころを投げ込んだが、やはり反響はなかった。
どうしたものか決まらないまま一日たって、新聞記者や学者、やじ馬や利権屋までが集まってきた。
学者はいろいろ調べたが分からないので内心困ったけれど、もっともらしい口調で
「埋めてしまいなさい。」と言った。
その時、人垣をかき分けて出てきた利権屋が言った。
「その穴を私に下さい。埋めてあげます。
私が新しい社を建てて、村の集会場も作ってあげましょう。」
利権屋の設立した穴埋め会社は、都会に向けて猛烈な宣伝活動を始めた。
「素晴らしく深い穴がありますよ。学者たちも少なくとも五千メートルはあると言っています。原子炉のカスなんか捨てるのに絶好でしょう。」
村人たちはちょっと心配したが、数千年は絶対に地上に害は出ないと説明され、また、利益の配分をもらうことで納得した。
原子炉のカス、省庁の機密書類、伝染病の実験に使われた動物の死体、引き取り手のない浮浪者の死体、押収した偽札、犯罪の証拠・・・、何を捨てても、どんなに捨てても、穴はいっぱいになる気配を示さなかった。
穴は、都会の汚れを洗い流してくれて、海や空が以前に比べて、いくらか澄んできたように見えた。
ある日、ビルを建築中の作業員が、頭の上で
「おーい、でてこーい。」と叫ぶ声を聞いた。
そして、声のした方角から、石ころが彼をかすめて落ちていった。
しかし彼は、ますます美しくなってゆく都会のスカイラインをぼんやり眺めていたので、それには気がつかなかった。
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今から53年前、昭和三十三年(1958)の作品です。
茨城県東海村で、日本最初の原子炉・JRR1が臨界に達した翌年です。
予言の書だったのでしょうか。
空から声が聞こえてたんでしょうが・・・。
小石も落ちてきてたんでしょうが・・・。
ぼんやりと眺めていました。
◇映画「100,000年後の安全」
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