
前回、石造物だらけのお宅をご紹介しましたが、そのまん前の家には、これまた凄い石造りの蔵が建っています。

まさに、三国街道沿いの名主様か豪農か、はたまた豪商のお屋敷といった風情です。

「百度石」というのは、お百度参りをする時に、社寺との間を往復する目印になるものだそうです。

ここから北へ行った所に「金剛寺」がありますが、「百度石」から「山門」までは100mほどあります。
この間を往復してお百度を踏んだら、
200m×100回=20km?
うっそー \(◎o◎)/!

心の中で「たのもー!」と言いながら山門を潜ると、「わん、わん、わん!」と応答がありました。
境内には沢山の石仏や塔があったので、見せてもらおうと思ったのですが、ワンちゃんは一向に鳴き止みません。
内心「このバカ犬が!」と思っていると、ガラッと渡り廊下の窓が開き、お寺の奥様らしい方がお顔を出しました。
多少慌てて、「こんにちは。境内を見させてください。」と取り繕うと、奥様は笑顔で「はい、どうぞ。」と仰ってくれたのでホッとしました。
鳴き続ける犬を気にして「すみません、騒がせてしまって。」と言うと、「いいんですよ。犬は鳴くもんです。」というお答えに、今度はハッとしました。
「犬は鳴くもの」。
そうでした。
ワンちゃんは、一生懸命じぶんの役目を果たそうとしていただけなんですよね。
いけないのは、当然という顔をしてズカズカ入り込んだ、私の方でした。
奥様の笑顔とお言葉に、自分の傲慢さを反省させられました。
だめですねー、いくつになっても・・・。

「十の善き戒め」とも書かれていて、左側に小さくこう書かれていました。
不殺生(ふせっしょう)
不偸盗(ふちゅうとう)
不邪淫(ふじゃいん)
不妄語(ふもうご)
不綺語(ふきご)
不悪口(ふあっく)
不両舌(ふりょうぜつ)
不慳貪(ふけんどん)
不瞋恚(ふしんに)
不邪見(ふじゃけん)
詳しくはこちらをご覧ください→「修験道と六波羅密」(本山修験宗天王山大覚院)

その「薬師堂」が、本堂の裏側にありました。
カシノキでしょうか、大きな、大きな木の下に、こじんまりとした、でも風格のあるお堂です。

「顔切り薬師」と呼ばれる、この薬師様には、こんな話が伝わっています。
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昔、三国街道沿いに「弘法ヶ池」という池がありました。ある日の日暮れどき、この池でとても美しい娘が髪をとかしていました。
そこを通りかかった一人の男が、その娘を手篭めにしようと掴みかかりました。
娘は強く抵抗して逃げようとしましたが、逃がしてなるかと、男は腰の刀を抜いて娘に切りつけました。
憐れ、娘は血しぶきを上げてその場に倒れてしまいますが、その直後、男も血へどを吐いて、その場で息絶えてしまいました。
その翌日、村人が薬師堂にお参りに行ってみると、前日まで何ともなかった薬師様の顔が、切り取られたようになっていたというのです。
誰言うとなく、「弘法ヶ池」の事件は、薬師様が娘の姿になって現れ、悪い男を退治したのだと噂されるようになりました。
それからは、この村には娘を襲う悪い男は、一切出なくなったそうです。
(群馬町誌より)
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現代、再び薬師様のお力を借りたいような事件が続いています。
薬師様に助けて頂くには、我々の信仰心も取り戻さなくてはいけないのかも知れませんね。
今日の散歩は、距離は短かったですが、中身は深いものがありました。