2024年07月06日

隠居の控帳 万札うらおもて

7月3日、新しい紙幣が発行された。
一万円札の肖像画は渋沢栄一
隠居の控帳 万札うらおもて

それに伴って、渋沢栄一の経済的業績と道徳的人物像が盛んに讃えられている。

しかし、どんな人物にも多面性があるもので、あまり表に出ない渋沢栄一の一面についても知っておく必要があろう。

一橋大学学生・朝倉希実加氏の「週刊金曜日」誌への寄稿から見てみよう。
  渋沢が主人公のNHK大河ドラマ「青天を衝け」のハンドブックには、次の記述がある。
「昨年、栄一が新紙幣の肖像画のモデルになると発表されるや、韓国国内からは「植民地支配の被害国への配慮にかけている」と批判が出た。無理からぬことだ」。
日本が朝鮮を侵略し、渋沢の金融事業や鉄道建設が朝鮮人の土地を奪って、朝鮮人を貧困に追い込み、過酷な労働を強いながら利益を得たという歴史的事実に対する言及である。
同書は続いてこう語る。「だが日本にしてみれば、『官尊民卑』な役人暮らしに嫌気がさして財界にその身を投じ、第一国立銀行を立ち上げ、明治日本の財界を背負って立った人物なのだから、肖像画のモデルになってしかるべきなわけだ」。
つまり、被支配側からはどう見られていようと、日本側から見れば渋沢は偉人であり、彼が英雄視されるのは当然である、という視点である。
「一橋大生が迫る渋沢栄一と朝鮮侵略」(週刊金曜日2021.12.10)

韓国が新一万円札の肖像画に反発する理由は、渋沢が明治三十五年(1902)に朝鮮で発行した紙幣に始まる。
隠居の控帳 万札うらおもて

一橋大学大学院生・牛木未来氏は、こう言う。
  「株式會社第一銀行」「壹圓」の文字の隣に威圧的な雰囲気を放つ男性の肖像。渋沢栄一が紙幣の「顔」となるのは、2024年が最初ではない。
渋沢を擁した写真の紙幣は、渋沢が設立した第一銀行(日本最初の銀行・第一国立銀行の後身)のものである。1902年から朝鮮半島で流通した。第一銀行が朝鮮に支店を持ったためである。
朝鮮人にとってそれは何を意味したのだろうか。(略)

日本貨幣の浸透は、朝鮮社会にもともと存在した貨幣の価値を下落・不安定化させ、金融の混乱に乗じて日本商人が投機的な利益を得る一方、朝鮮人商人は大きな損失を被った。(略)

第一銀行が貸出において朝鮮人への差別を行った結果、朝鮮人の預金額は貸出額を大幅に超過し、朝鮮人商人は困窮に陥った。(略)
つまり、第一銀行の進出の結果破産した朝鮮人を日本経済に従属させ、朝鮮独自の金融体系を破壊したのである。
一方、朝鮮人や外国人(中国商人と思われる)の超過預金は朝鮮に進出した日本企業や商人の資金とされた。
彼らは事業の展開に当たり朝鮮人から土地や生産手段を奪い、労働者として過酷な条件で働かせた。(略)

以上のような経済侵略を前提として、植民地期には日本による収奪政策が強化された。
その結果、大部分の朝鮮人は慢性的な貧困状態に陥った。
そして、貧困を背景として、多くの朝鮮人が故郷を離れ日本や中国東北部に渡ることを余儀なくされた。
(週刊金曜日2021.12.10)

レイバーネットTVより。




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Posted by 迷道院高崎 at 06:00
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