清水寺の石段の手前に、首を傾げた手押しポンプの付いた古井戸があります。
四角い石を井桁に組んでいるので「井桁の井戸」と呼ばれています。
側面をよく見ると、「井桁」と文字が刻んであります。
「清水」という字名が示すように、観音山の麓には清らかな水が湧き出ていましたが、山上はその逆に水はほとんど出なかったようです。
清水寺を参詣する人の喉を潤したこの井戸の水は、山上の清水寺にとっても無くてはならないものでした。
毎日、毎日、五百数十段の石段を上り下りして水を運び上げていたのだそうですから、それは大変なことだったでしょう。
それにしても、なぜそんな水のない山上にお寺を造ったりしたのでしょうか。
実はあまり知られていないのですが、もともと清水寺というお寺は山上にあった訳ではないのです。
1990年に制作された「観音山のむかしと今」という映画に、その話が出てきます。
この映画によると、清水寺が山上に移ったのは明治になってからということなんですね。
ただ、その辺の経緯がよく分かりません。
ご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示ください。
山上に水がなくて困ったのは、清水寺だけではありませんでした。
昭和九年(1934)九月から着工した白衣大観音の建設現場にとっても、それは大変なことでした。
白衣大観音建設秘話を知る、井上工業の番頭格であった横田忠一郎氏は、その著「高崎白衣大観音のしおり」の中で、次のようなエピソードを紹介しています。
いい話ですね。
あ、今回はだいぶ長くなってしまいました。
観音山の水の話は、次回も続きます。
では、また。
四角い石を井桁に組んでいるので「井桁の井戸」と呼ばれています。
側面をよく見ると、「井桁」と文字が刻んであります。
「清水」という字名が示すように、観音山の麓には清らかな水が湧き出ていましたが、山上はその逆に水はほとんど出なかったようです。
清水寺を参詣する人の喉を潤したこの井戸の水は、山上の清水寺にとっても無くてはならないものでした。
毎日、毎日、五百数十段の石段を上り下りして水を運び上げていたのだそうですから、それは大変なことだったでしょう。
それにしても、なぜそんな水のない山上にお寺を造ったりしたのでしょうか。
実はあまり知られていないのですが、もともと清水寺というお寺は山上にあった訳ではないのです。
1990年に制作された「観音山のむかしと今」という映画に、その話が出てきます。
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この映画によると、清水寺が山上に移ったのは明治になってからということなんですね。
ただ、その辺の経緯がよく分かりません。
ご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示ください。
山上に水がなくて困ったのは、清水寺だけではありませんでした。
昭和九年(1934)九月から着工した白衣大観音の建設現場にとっても、それは大変なことでした。
白衣大観音建設秘話を知る、井上工業の番頭格であった横田忠一郎氏は、その著「高崎白衣大観音のしおり」の中で、次のようなエピソードを紹介しています。
「 | 工事は順調に進んだが、山上の事で水が無く、中途で行き悩みの状態となった。こんな大工事に、いちいち水を下からくみ上げるようでは仕事は進捗しない。仕方がないので井戸を掘った。しかし水は出ない。いくつも井戸を掘った。こんな悩みの日が幾日か続いた。 |
ある日のこと、翁(井上保三郎)は、観音さまの工事現場から帰宅して疲れを休めようと体を横にした。いつ寝入ったのか、ずるずると眠りに落ちてしまった。それから数刻を経たか、突然眠りから覚めた翁は、『不思議だな。不思議だな。』と自問自答して頭を傾げた。 |
|
翁は、翌朝夜の明けるのを待って現場に急いだ。土工たちは、こんなに早く、しかもいつもの翁とは、顔つきが違うように見えて不思議でたまらなかった。 | |
『さあ、今日は、皆も元気を出して私の言うようにやってみてくれ。他の事はほっといて、力を合わせて観音様の後裾の下になる所を掘ってくれ。』と、翁に言われるままに、その所を掘り始めた。 | |
『旦那は今日はとても変だぜ。』小声で土工たちが話しながら力強くツルハシを振り上げ、幾時間も一生懸命に掘り下げた。 |
|
短い一日の陽は、はや近々の山に落ちようとしていた。その時である。 | |
『水だ!』 『アッ!水だ!』 土工たちは狂喜した。 |
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その声を聞きつけた翁は、土工たちを押し分けて井戸をのぞいた。 『アッ!水だ!ありがたい。』 翁は手を合わせた。熱い感謝の涙が目頭を光らせた。 |
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このありさまを呆然と眺めていた人夫の一人は、翁の側に寄って、『旦那、何かあったのですか。』とおそるおそる尋ねた。 『ウン』とうなづいて、翁は静かに語り出した。 |
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『実は昨夕現場から帰り横になって、寝るともなく、うつらうつらしていると、私の枕元に日頃信仰している白衣の観音さまが現われ、心配するな、水は出る、ここを掘れよと水の出る場所を教えて消えられた。そこで私は目が覚めた。しかし今まで半信半疑でおったが、今日は早くから来て皆にここを掘らせたのだ。こうして水が、しかも清らかな水が湧くのを見ると、夢ではなかったのだ。』」 |
いい話ですね。
あ、今回はだいぶ長くなってしまいました。
観音山の水の話は、次回も続きます。
では、また。