2011年06月24日

鎌倉街道探訪記(33)

鎌倉街道探訪記(33)「山の上の辻」から南へ、坂を下って600mほど行くと、上信電鉄の小さな無人駅「西山名駅」に出ます。

鎌倉街道探訪記(33)


素朴な駅舎の多い上信電鉄の、しかも無人駅にしては、えらくハイカラな感じのする駅です。

10年前までは何もない空き地の駅前でしたが、隣にある「県立高崎産業技術専門校」の学生さん達が実習を兼ねて、こんな素敵な駅に生まれ変わらせたのです。

鎌倉街道探訪記(33)技術専門校の7つの科が、それぞれの専門技術を生かして、待合室をはじめ、花壇、噴水、スロープ、自転車置き場などを、平成十三年(2001)から2年がかりで造り上げました。

黒塗りのお洒落な待合室に掲示してある駅長さんのメッセージから、感謝の気持ちが伝わってきます。

鎌倉街道探訪記(33)駐輪場にあるこれも、きっと技術専門校の方が設置したものでしょう。→
 ハイテク空気入れ 明治維新
この機械は自動車のエンジンを使って作られた自転車用の空気入れです。
空気入れの口を自転車タイヤの空気入れ口に取り付けて、右に回してください。
と、説明板に書いてあります。

さらに、こうも。
空気を入れなくても回してみると、ピストンが動いてなんだかちょっと面白いかも。」
遊び心満点で、いいですねぇ。

鎌倉街道探訪記(33)自由に入れる駅のホームに、新聞受けみたいな木箱が取り付けられていました。

「上野三碑・山上碑及び古墳案内図」と書いてあります。

鎌倉街道探訪記(33)



箱の中には、高崎市観光課作成の「上野三碑を歩こうマップ」が入っていて、自由に頂戴できるようになっています。

さて、この「西山名駅」ですが、上信電鉄の全線電化(大正十三年・1924)後6年経ってから、新設された駅です。
当時の駅名は、なんと「水泳場前停留場」といいました。

海無し県の、それも水の便が悪いというこの地の、どこに水泳場があったのかと思うでしょうが、近くを流れる鏑川に、人工の天然水泳場(?)があったのです。
鎌倉街道探訪記(33)
←造ったのはこの人、上信電鉄の第10代社長・山田昌吉氏です。

山田昌吉氏は、このブログにたびたび登場して頂いております。

2009年09月30日 さすらいの「春靄館」
2010年04月21日 和風図書館と茂木銀行
2011年05月22日 鎌倉街道探訪記(29)

山田昌吉氏が、上信電鉄の前身である上野(こうずけ)鉄道の社長に就任したのは、大正十年(1921)のことです。

明治三十年(1879)開業の上野鉄道は徐々に経営難に陥り、大正二年(1913)には6万円の借金のために、東京安田銀行に経営を委ねなければならないという状態にまで追い込まれていました。
当時、茂木銀行高崎支店の支配役であった山田昌吉氏は、
「地元の鉄道事業を、わずかな金額で中央資本に売り渡すべきではない。」と主張し、6万円を融資して上野鉄道の窮状を救ったのです。

しかし、その後も上野鉄道の経営悪化は止まらず、ついに、辣腕振りを見込まれた山田昌吉氏に、白羽の矢が立ったわけです。

社長に就任した山田氏が真っ先に取り組んだのは、路線の軌間拡幅と電化(大正十三年・1924)で、社名も上信電氣鐡道と改めました。
これにより、国鉄線との相互乗り入れが可能となり、輸送力増強と動力費の節減が図れたのです。
それまで20万円程度であった資本金は、一気に200万円に増資されています。

鎌倉街道探訪記(33)次に山田氏が取り組んだのが沿線の観光振興による旅客数向上で、「山名水泳場」の開設はその一環でした。

昭和四年(1929)に開設した「山名水泳場」は、自然の景観の良さに加え、流れの変化もあり、山名駅から近いということもあって、予想外の大好評を博したということです。

そして翌・昭和五年(1930)、より近くにと開設したのが「水泳場前停留場」で、当時はプラットホームだけの仮設駅だったそうです。

さて、では「山名水泳場」はいったいどんな水泳場で、どの辺にあったのか、それは次回のお楽しみということに。

(参考図書:「上信電鉄百年史」)


【西山名駅】





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Posted by 迷道院高崎 at 19:57
Comments(8)鎌倉街道
この記事へのコメント
隠士、ますます探訪ご発展、楽しみに読んでおります。

上信電鉄の「山名水泳場」とはまた着目が渋い。レトロな広告もなんともいい味です。

小生、ご幼少の砌(笑)、上信電鉄で白い神馬のある神社を父と訪れた記憶があり、父に記憶を尋ねたところ山名八幡宮だったと回答あり。

もう半世紀以上前のことですが、当時県内の私鉄も沿線の観光振興による旅客数向上に力を注いでいたのですね。

またそういう私鉄でちょっとお出かけの行楽(!)の企画が、娯楽が乏しかった時代の所為もあるのでしょうけど、庶民にとって大きな楽しみだったと思います。半世紀前、地方の私鉄は自動車の普及以前の大きな足でしたね。

上電(上毛電鉄)で祖母に連れられ、大間々 ながめの菊を見に行ったことも思い出しました。
あ、そういえば、これも記憶を呼び起こされたのですが、上電も水泳場往復の切符を発行していた記憶があります。駅名はちょっと思い出せません。

いろいろなことを思い出させてくれる、探訪記ですね。

次回も楽しみにしております。

   夢寅 拝
Posted by 夢寅  at 2011年06月25日 00:39
>夢寅さん

暑い日が続きましたね。
夢寅さんの素敵な写真で、涼をとっていました。

今大騒ぎしているデスティネーション・キャンペーンが、80年以上も前に一私鉄企業によって行われていたことに、驚きです。
山田氏の頭の中には、阪急電鉄の小林一三の沿線観光策があったのではないかと思います。

上電の水泳場というのは、たぶん上泉駅あたりではないでしょうか。
山名水泳場より、一足早く開設していたようですね。(ちょっぴり残念)
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2011年06月25日 19:11
昔風の駅舎がだんだん少なくなっていくのは淋しいですが、西山名駅、おしゃれですね。
使い方がよくわからないけど、ハイテク空気入れも面白いし・・・山名水泳場ですって!
なんて次々と愉快なものが登場するんでしょうか。
「上野三碑を歩こうマップ」を参考に、とりあえず三碑は回ったのですが、山名は、じっくり歩いたらもっと楽しめそうですね^^。
Posted by 風子風子  at 2011年06月25日 21:48
>上電の水泳場というのは、たぶん上泉駅あたりではないでしょうか。
山名水泳場より、一足早く開設していたようですね。(ちょっぴり残念)

・・・・そうです。上電上泉駅。
「竹の花プール」です。
父に電話で聴いてみたのですが、昔の話を楽しそうに語ってくれました。

桃の木川の水を単純にプールに引き込んだだけの牧歌的な(現在のプールの水質基準、それも☢以降の放射線量測定なんて全然気にしなかった時代)な施設。

小生の子供の頃はまだ営業していたと思います。ただその頃になると、市内の小学校にはプールがあり、利用した記憶はありませんでしたが。

>阪急電鉄の小林一三の沿線観光策

著名なものに宝塚歌劇団・・・


それが上電の場合、ながめの演芸場が該当かな。さすがに阪急はモダンですね(笑)。

いろいろ思い出す契機をご提供頂きありがとうございました。

    夢寅 拝
Posted by 夢寅 追記  at 2011年06月25日 22:37
>風子さん

そーなんですよ。
けっこう楽しめます。

面白いものが沢山あるのに、地元の方にとっては普段当たり前に見ているものなんでしょうね。
上野三碑と併せて、もっと紹介してもらうといいのになぁ、なんて思ってます。
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2011年06月25日 22:49
>夢寅さん

上泉駅、当たっちゃいましたか。
御父上と懐かしいお話ができてよかったですね(^_^)

昔は、みんな川で泳ぎましたよね。
なんたって源泉かけ流しですから。

そうそう、ながめ余興場といえば、7月24日(日)、8月11日(日)の「大間々ながめ亭 お楽しみ寄席」、柳家紫文師匠が出演されます。
よろしかったら、お出かけください。
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2011年06月25日 23:04
出演は、7月24日と8月11日でなく9月11日です。

よろしくお願いいたします。
Posted by 紫文  at 2011年06月29日 01:51
>紫文師匠

あちゃ!
8月と9月を間違えましたm(__)m

大間々の前に「よしい演芸館」7月18日(月)もありましたね。

楽しみにしております!
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2011年06月29日 08:42
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