2009年05月30日

消えた一里塚

消えた一里塚「安楽寺」から旧中山道を高崎市街方面へ進むと、「あれ?」と思うほど長く続く松並木が目に入ってきます。

いつも歴史遺産の破壊を嘆いてばかりですが、この旧中山道松並木の復元は「よく、やってくれた!」と嬉しい気持で一杯になります。


消えた一里塚倉賀野近辺の中山道松並木は、比較的最近までその姿を留めていたようです。

右の写真は、高崎で生まれ育った写真家・伊藤富太郎氏が残してくれた、大正9年(1920)当時の松並木の姿です。(写真は高崎市史民俗調査報告書「倉賀野町の民俗」より拝借)

「高崎の散歩道 第二集」に、「高崎市史」よりとして、安政三年(1856)当時の倉賀野宿から高崎宿間の並木の本数が記されています。
   松杉   二千七百本
   新植付 八百三十五本

もともとは、松と杉の並木だったようですね。

消えた一里塚昭和七年(1932)に道路が改修され、分離二車線になっています。南側の並木は中央分離帯となりました。(写真は高崎市史民俗調査報告書「倉賀野町の民俗」より拝借)

同報告書によると、夜間、自動車が度々分離帯の柱に衝突し、消防自動車まで衝突するに及んで、ついに昭和二十五年(1950)頃、分離帯を取り除いたということです。
この時から、並木は片側のみになったのですね。

片側だけになってしまった並木に、今度は自動車の排気ガスが襲いかかります。
昭和三十六年(1961)には並木の多くが枯れ、倉賀野宿から和田多中間には、杉49本、松8本だけになってしまいます。
そして、枯れ残った並木も昭和三十八年(1963)にすべて伐採されてしまいました。

さて、その後、現在の松並木が一体いつ、どのような経緯で復元されたのでしょうか?
その話は、次回に回すとしましょう。

ところで、倉賀野宿には一里塚もあったようです。
場所は、「安楽寺」の少し高崎寄りで、街道の両側にあったということですが、今は跡形もなく消えてしまいました。

その一里塚は、江戸日本橋から二十六里(102km)目だったそうです。
因みに、二十七里目の一里塚高崎宿九蔵町にあったということです。
現在残っている豊岡一里塚は二十八里目ということになります。

消えた一里塚右の写真は、現在の豊岡一里塚ですが、こんなのが倉賀野に残っていたら凄かったですね。

復元された松並木が大きく育ってきたことでもあり、せめて「一里塚跡」という碑だけでも、建てられないものでしょうか。

(参考図書:「高崎の散歩道 第二集」、「倉賀野町の民俗」)



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Posted by 迷道院高崎 at 07:42
Comments(4)倉賀野
この記事へのコメント
自然展にきていただいてありがとうございました。
中仙道の一里塚のエノキが片方になったのは本当に残念です。松並木ももう少しつながるといいですよね。
倉賀野へ向かう松並木も結構うれしいです。
昔のことを調べたら、街道は松並木だらけだったようですね。
高崎は、エノキと赤松の町だったのだ!
Posted by k  at 2009年06月08日 23:42
>kさん

コメントありがとうございました。
嬉しかったです!
「観音山丘陵の自然展」では、お世話になりました。
とても楽しかったです。
昔に戻すのは難しいことですが、せめて、これ以上壊してほしくはないですよね。
kさんの活動、とても貴重だと思います。
これからもよろしくお願い致します。
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2009年06月09日 00:00
迷道院高崎様
ブログを楽しく閲覧させていただいております。
早速ですが、ブログの「消えた一里塚」の倉賀野松並木の写真「写真7」の中央に映っている「石柱」の事です。知人の「大○○美」さんという方の情報ですが、その石柱には縦書きで「左道通行」と記されていて、新町の某所に実在するそうです。
道路の拡幅工事で紆余曲折し、かろうじて残されていたとのことです。よろしかったら電話をしてみてください。本人には了解済みです。
大○○美様 電話XXXX-XX-XXXX
Posted by 福島長治  at 2016年12月16日 14:20
>福島長治様

貴重な情報、ありがとうございます!
早速、大○様にお電話を差し上げ、お会いする運びとなりました。
大切な歴史資産を残していくためにも、情報を拡散したいと思います。
少しでもそのお手伝いができたら嬉しいです。
ありがとうございました。

なお、大○様の個人情報は、私の一存で伏字にさせて頂きました。
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2016年12月16日 14:55
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