
お堂の額には「弐佛堂」(にぶつどう)と書かれているのだが、掲示されている看板には「三仏堂の沿革」と書かれた、妙なお堂である。

日本三大天狗というのは、
◆迦葉山 弥勒寺(沼田)
◆鞍馬山 鞍馬寺(京都)
◆高尾山 薬王院(八王子)
のはずだが?はて?と思いつつ、住宅街の小路を山に向かって歩いてみた。

石段を上がると、割と新しい建物があり、そこが「伊津奈大権現」の社である。
社は最近立て替えたものであろうが、昔からこの地の氏神として「飯綱社」というのがあったようだ。
以前は、鳥居に「伊津奈大天狗」と書かれていたという。

すると、近くに住んでいる方が声をかけてくれた。
聞くと、社の竣工時に高尾山のお坊さんが来ていたという。
高尾山といえば「日本三大天狗」のひとつであるが、それとどんな関係があるのだろう?
ヒントは「伊津奈(いづな)」という名前にあった。
高尾山薬王院のご本尊は、「飯縄(いづな)大権現」という。
字は違うものの、同じ「いづな」である。
おそらく、何らかの経緯で高尾山の天狗を勧請したのであろう。

そのひとつが、多中の琴平神社である。
ここでは、烏天狗の像がちょうど狛犬のように、石段の下で神殿を守っている。
この他、並榎町常仙寺の道了尊、高崎神社の猿田彦神社、根小屋の白髭神社、下小鳥の幸宮神社、片岡の秋葉神社も天狗さまを祀っている。
「天狗」は日本神話の「猿田彦命」(さるたひこのみこと)だという。
「猿田彦命」は、高天原から天孫「瓊瓊杵尊」(ににぎのみこと)が天下る時に、道案内をしたという神である。
後に、その天下った民族が関東以北の蝦夷征伐をしていくのである。
高崎の各地にいた「天狗」、蝦夷征伐の途上に清水寺を開基した「坂上田村麻呂」、常世の国へ弾き飛んだ小祝神社の「少彦名命」。
一本の糸で、つながってきたではないか!
【伊津奈大権現】
※車で行くには、和田橋を直進して護国神社の所から入ると近いです。