2012年02月04日

続・鎌倉街道探訪記(9)

「萬日堂」から先の鎌倉街道については、頼みの「歴史の道調査報告書」も、いくぶん心許なくなってきます。

万日堂からの道はすっかり様子が変わり、鎌倉道らしい道も、また伝承もない。・・・
・・・国道の北に、水路に沿った道が残っており鎌倉道とは云われないが、古くからの道であるという。
この道も自動車教習所の所で終わり、その先に続く道はない。中山道が整備された時に古い道は廃道になってしまったものと思われる。」

そう言われると困っちゃうのですが、過去記事「鎌倉街道探訪記(16)」の中に出てくる謡曲「鉢木」には、こんなくだりがあります。

信濃なる、浅間の岳に立つ煙、遠近人(おちこちびと)の袖寒く、吹くや嵐の大井山、捨つる身になき伴の里。今ぞ憂き世を離れ坂、墨の衣の碓氷川、下す筏の板鼻や、佐野の渡りに着きにけり。」

そう言っているのは、諸国巡歴中の最明寺入道、鎌倉幕府執権を退いて出家した北条時頼です。
巡歴を終え鎌倉へ戻る途中ですから、当然鎌倉街道を使ってるはずで、板鼻から佐野の渡りへ着いたというのですから、この豊岡を通っているに違いありません。(お話としては。)
ま、とにかく「板鼻」を目指せばいいということでしょう。

続・鎌倉街道探訪記(9)「萬日堂」から西へ50mほど行くと、丁字路になります。

右へ行くのが、「歴史の道調査報告書」にある「自動車教習所の所で終わる」道ですが、今日は目的があるので、左へ行きます。
続・鎌倉街道探訪記(9)

「山崎商店」の立派な蔵の前を通って坂を上がると、国道18号406号の大きな分去れに出ます。

続・鎌倉街道探訪記(9)




右の国道406号を進みます。

続・鎌倉街道探訪記(9)

右側を見ながら歩くと、こんな素敵な建物に出会ったりします。

続・鎌倉街道探訪記(9)分去れから180mほどで、このコースを選んだ目的の「石神社」に着きます。
素直に読めば「いし・じんじゃ」ですが、地元の人は「シャクジさま」と呼びます。

東京練馬に「石神井」(しゃくじい)という地名がありますが、「石神」と書いて「しゃくじ」と読む地名や神社は全国にあるようです。
平成十九年(2007)に発行された「豊岡誌」では、「石神社」と書いてあったり「石神神社」と書いてあったりで統一されていませんが、読みはどちらもしゃくじ・じんじゃ」となっています。

「石神社」と書くくらいですから、お社には「石」「岩」がお祀りされていそうなものですが、祭神は八衢比古(やちまたひこ)と八衢比売( やちまたひめ)という、疫病・災害などをもたらす悪神・悪霊が集落に入るのを防ぐ神様です。

続・鎌倉街道探訪記(9)同じ役目を持つものとして「道祖神」がありますが、「石神社」の境内にも道祖神があり、側面には「明和元年(1764)社宮司村」と刻まれています。

「社宮司」「しゃくじ」の当て字で、ここの小字名も「尺地」と書いて「しゃくじ」です。

その「尺地」も当て字でしょうが、その字面からこんな説も生まれてます。

昔、碓氷峠から中山道の里程を尺縄(しゃくなわ)を使って測っていたところ、この地で尺縄がボロボロに擦り切れてしまったので、尺縄が切れた地の意味で尺地と名付けた。
切れた尺縄を萬日堂の境内でお坊さんに拝んでもらい、石神神社に祀った。」

もうひとつ面白い話があって、地元の人は「しゃくじ」という音に「杓子」(しゃくし)を連想したようで、昔は「石神社」「しゃもじ」を供えて、家内安全を祈願していたといいます。

信仰というのは、なんとも実に、人間らしい行いなんだなぁと思う訳です。

はい、今日はここまで。
250mのお散歩でした。

(参考図書:「豊岡誌」「高崎の散歩道」「続・高崎漫歩」)


【石神社】






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Posted by 迷道院高崎 at 08:03
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