2009年11月29日

追分の八坂大神

追分の八坂大神大橋町から北へ、信越線を渡って少し行くと、「追分」と言われているところがあります。

←現在はガードレールが邪魔をして、追分けられる感じではありませんが・・・。
追分の八坂大神
昔(年代不明)はこんな感じ→


(写真は、「群馬県歴史の道調査報告書 三国街道」より)

現在、三国街道と言うと右側の高崎・渋川線を言いますが、古来の三国街道は左側の道です。
おそらく、昔は左側の道しかなかったのだと思うのですが、「明治前期 関東平野地誌図集成」の二万分一地図には、既に右側の道が描かれています。
同地図の作成時期は明治十三年(1880)~十九年(1886)とされていますが、明治十八年(1885)には清水峠越えの新三国街道が開通していますので、もしかすると、右側の道はそれに伴って開かれたのかも知れません。

追分の八坂大神追分の分去りには、道祖神八坂大神・愛宕神社が祀られており、傍らの標柱には「旧三国街道跡」とも書かれています。

それにしても「防犯監視中」などという看板、ずいぶん野暮な所に立てたものですが、お賽銭を盗もうとする、罰当りな輩でもいるんでしょうか?

八坂大神とは牛頭天王(ごずてんのう)のことで、スサノオノミコトがその垂迹ですが、これ、なかなか怖い神様です。
「備後国風土記」に、こんな話が出てきます。

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昔、北の海に居た「武塔(むとう)の神」が、南の海の神を訪ねる旅の途中、ある村まで来ると、すっかり夜になってしまいました。
その村には、裕福で百もの蔵を持つ巨丹将来(こたん・しょうらい)という者と、その兄で貧しい暮らしをしている蘇民将来(そみん・しょうらい)という者がいました。

武塔の神は最初、裕福な弟の巨丹の所へ行って、一夜の宿を乞いますが、巨丹は惜しんで、宿を貸しませんでした。
次に行った、貧しい兄の蘇民の所では、こころよく宿を貸し、粗末な粟飯ではありましたが、心をこめたおもてなしをしました。
武塔の神は帰りがけに、蘇民にこう言います。
「家族には、茅の輪を腰に着けさせておきなさい。」

後に村を再訪した武塔の神は、その村に疫病を流行らせました。
弟・巨丹の一族は悉く疫病に罹って滅んでしまいますが、茅の輪を着けていた兄・蘇民の家族は疫病に罹ることはなかったと言います。
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この「武塔の神」が牛頭天王、つまり「八坂大神」なのです。
スサノオノミコトを祀る神社で、今も「茅の輪くぐり」の行事があるのも、この故事に因るのではないかと思われます。
一方の「愛宕神社」は、火伏せ・防火に霊験のある神社として知られています。
どちらも、京都「八坂神社」境内に摂末社として祀られている神様です。

飯塚の追分の碑は、明治三十五年(1902)、近くの小字新田(しんでん)の氏子が建立しています。
新三国街道が開通して往来が増えて来ると、それにつれて厄病災厄も増えていったのかも知れません。
八坂大神愛宕神社を祀った、当時の村人達の気持ちが察しられます。

当時の村人たちの思いを活かして、野暮な「防犯監視中」という看板は、八坂大神の怖い故事を書いた看板に置き替えてみてはどうでしょう?
疫病怖さに、賽銭を盗む手も止まるのではないかと思うのですが・・・。

いやいや、それは今のご時世、甘いかも知れませんね。
巨丹だってケチで薄情な人のように書かれていますが、今なら誰だって見ず知らずの人を泊めたりしませんよね。
そうか!蘇民は、奪われる物は何も持っていなかったから、見ず知らずの人にも親切にできたのか。
とすると、一番悪いのは逆恨みをした「八坂大神」
うーん、これは考えさせられる問題ですね・・・。

【追分の八坂大神】




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Posted by 迷道院高崎 at 08:02
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