2013年02月17日

八重の桜と小栗の椿(3)

小栗夫人一行が「野反池」のほとりを通過したのは旧暦の閏四月十二日、新暦では六月二日となります。

レンゲツツジは咲いていたのでしょうか。

権田村から夫人一行を護衛してきた10人に加え、道案内や駕籠方・荷役方・牛方として地元民9名が、これから先の秘境・秋山郷越えの難所に挑みます。

小板橋良平氏著「小栗上野介一族の悲劇」には、同行した地元民の子孫からの聞き書きとして、次のようなエピソードが記されています。

大倉峠の峰付近まで来たとき、山本芳五郎が酒手をゆする心算で、『ここから帰らせてもらう。』と帰るふりをしたら、夫人の家来が突然刀を抜いたので、
『おらあー、あんなおっかねえ思いをしたのは生まれて初めてだ!』と後に述懐したという。

また渋沢から山駕籠に乗って、佐武流山麓から障子峰近くを通行中、疲労と悄愴に加えて妊娠八ヶ月余りのため、ストレスは極限状態に達していたのであろう。
イライラした夫人が
『まだ秋山へは着かぬか。』突然駕籠の中から叫んだ。
『もうじきでがんす。』駕籠かきが答える。
また半刻もすると我慢に耐えきれぬように、
『まだ着かぬか。』
『はあ、じきでがんす。』
またしばらく行くと、
『まだ着かぬか。』
『はあ、じきでがんす。』
また暫く行くと、ますます夫人は苛立って、
『まだ着かぬか。』
『はあ、じきでがんす。』
すると怒った小栗夫人は、
『お前たちは妖怪変化か!』と言うなり、懐剣を抜いた。
山本芳五郎じいさんが、当時を振り返って話してくれたという。」

このように大変な山行の末、一行がやっと信州・和山温泉まで辿り着き、疲れを癒すことができたのは、閏四月十三日のことでした。
和山温泉で二泊した後、再び山道を潜行して越後に入り、反里口(そりぐち)で一泊します。

この頃、東山道副巡察使・原保太郎、豊永貫一郎が、高崎・安中・吉井藩の兵を率いて、三国峠を越え会津討伐に向かっているという情報が、小栗夫人一行にもたらされます。

そして夫人の護衛隊は、驚くべき行動に出るのです。(続く)






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この記事へのコメント
当時は野反湖ではなくて野反池だったのですね。
狭い駕籠に揺られて先行きわからぬ辛い旅は、
どんなに大変だったことでしょうか。
倉渕の権田村や秋山郷など、出かけたことがある地名ですが…懐かしくも悲しいお話です。
Posted by 風子  at 2013年02月17日 19:42
>風子さん

ダムができる前の野反池は、湿地帯だったそうです。

秋山郷へは行ったことがないのですが、和山温泉は今でも秘境の面影を残す秘湯だとか。
一行が温泉に浸かれた時の気持ちが、伝わってきます。
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2013年02月17日 21:14
ごぶさたです。
ひさ~しぶりに書き込みます。

会津のお城は
若松城で
八重の旦那は
新島襄

失礼いたしましたm(_ _)m
Posted by 紫文  at 2013年02月23日 12:03
>紫文師匠

さすが!
おまけに、襄を演じるオダギリジョー。

サライ3月号、拝見しましたよ!
入浴姿が気持ち良さそーでした!
高崎で、「銭湯寄席」でもできるといいですね。
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2013年02月23日 18:29
はじめまして、夕海(うみ)と申します。夕暮れの海のキレイな地で生まれ育ちました。高崎に住んで14年になります。偶然、このブログに出会い感動と感謝の毎日を送らせて頂いております。八重の桜を毎週楽しみに観ているのですが、迷道院高崎様のおかげで更に興味深く観ることが出来ています。高崎に来たころは右も左も分からず途方にくれたこともありましたが今では高崎が大好きです。これからも宜しくお願いいたします。
Posted by 夕海  at 2013年02月23日 20:52
>夕海さん

素敵ハンドルネームですね。

こちらこそ、感動的なコメントを頂き、ありがとうございます。

海なし県の群馬ですから、勝手が違って戸惑うことも多かったでしょうね。
でも、高崎を大好きになって頂いて嬉しいです。
高崎で生まれ育っても、まだ面白い発見がある町なので、どうぞ楽しんでください。

これからもよろしくお付き合いのほど、お願い申し上げます。
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2013年02月23日 21:14
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