2012年06月24日

上州弁手ぬぐい物語(4)

デザインも決定し、いよいよ正式注文となる訳ですが、ここでハタと考えました。
当初は、1種類だけ染めて様子を見ようかと思っていたのです。
しかし、それでは3枚組のこの手ぬぐいの良さが半減どころか、まったく無くなってしまうように思われました。

よし!3種類いっぺんに染めよう!
と決心はしたものの・・・、けっこうまとまった金額になります。
そうだ、生命保険の解約金がある、それを使おう。
そのことを女房殿に、小さな声でぼそぼそぼそと話したところ、意外にも二つ返事で了解してもらえました。

気の変わらぬ内にと、すぐ注文を出し、染め型作りに入ってもらいました。
型屋さんもなかなか苦戦されたと聞きましたが、そこも何とかクリアし、いよいよ染める日がやってきました。

その日、工程を見学させてもらえるということで、デザイナーの蓮明さんにも声を掛けて、立ち会って頂きました。
普段見ることのできない貴重な機会でしたので、皆さんにもご覧頂くことに致しましょう。
工場の中へ入ったら、水槽の中で型紙が泳いでました。
あれ?文字の部分は切り抜くんだと思ったら、切り残すんですね。
切り残した部分がなぜ残っているのか不思議だったんですが、型紙というのは三層構造になっていて、紙と紙の間にネットがあるんですね。

型紙を木枠にセットして布の上に乗せ、ヘラで糊を展ばして置いていきます。
糊が付いたところには、染料が染込まないということになります。
型を上げると、こんな感じです。

グレーの部分が糊が載っているところ、つまり染料が染込まないので生地の白い色が残るところです。
ロール状になっている布を折り返して重ね、また型の上から糊を置きます。
これを繰り返すのですが、「上州弁手ぬぐい」の場合、あまり重ねると糊の重みで文字が潰れてしまうので、10枚が限度だそうです。

一般の手ぬぐいでは20枚くらい重ねられるそうで、なるほど、そんな難しさがあるんだなぁと知りました。
糊を置き終わると、まとめて作業台から外します。

中村社長が、仕上がりを見ています。
作業台から外された手ぬぐいは床に置かれ、おが屑をかぶせて、一番上の糊が付着しないようにします。
余分なおが屑を箒で掃き落としてから、染色台の上にセットします。
色が異なるところは、染料が混じらないように糊で土手を築きます。

見ていると簡単そうに見えますが、きっと難しい技術なんだと思います。
いよいよ染料を注ぎ込んでいきます。
これが、「注ぎ染め」つまり「注染(ちゅうせん)」と言われる由来です。
注いだ後、バキュームで下の布まで浸透させます。
不思議なことに、注いだのは黄色い染料だったんですが、時間が経つと黒くなりました。

次は、赤く染める部分ですが、黄色のまま、なかなか赤くなりません。
そのまま、周囲の青色の染料を注ぎ込みます。青は初めから青色です。

赤はまだ黄色のままです。
今度は、裏返しにして、また糊を置いていきます。
もう一度、裏側から染料を注いでいきますが、今度はいきなり鮮やかな赤色が浮かび出てきました。

この赤色を見た時は、もう感動でした!
染めあがった布は、機械でバッシャバッシャ洗濯されて、糊と余分な染料を洗い流します。
きれいに洗濯されて、水槽の中で泳いでいる我が手ぬぐいを見ると、何とも愛おしく、まるで生まれたての赤ん坊を見るような感動を味わいました。

染めている最中は、何だかくすんで見えた青色も、実にすっきりといい色に染めあがっていますが、中村さんは「これで乾燥させると、また色が変わるんですよね。」と言っていました。
後日、天気の良い日に天日干しをしているところを撮影させてもらいました。

二人掛かりで、高ーい干し台に掛けていきます。

高所恐怖症の私は、下から見ているだけで目がくらくらしてきます。
よく晴れた4月の空に、「上州弁手ぬぐい」が気持ちよさそうに泳いでました。

感無量の心地で、いつまでも、いつまでも眺めていたい気分でした。
乾燥した手ぬぐいは、忍術使いの巻物のように丸められます。

でも、まだまだ、これで完成という訳ではありません。
この後、のばし、裁断、畳み、仕上げアイロン、帯掛け、「群馬県推奨優良県産品」のシールを貼って、やっと完成となるのです。

この工程を見たら、「注染手ぬぐい」の価格に得心がいきました。
いや、その価値を改めて理解することができました。
「注染」にこだわってよかったと思います。

ふっと心の中に、観音山白衣大観音開眼法要の際、真言宗総本山の高岡隆心大僧正が言ったという言葉が浮かんできました。
  「観音さまという立派な尊像ができたのに、肝心なお寺が無い。
   これでは、観音さまが単なる見世物になってしまうかもしれない。」


「上州弁手ぬぐい」中村染工場さんの「注染」でなかったら、単なる「飾り手ぬぐい」で終わってしまったかも知れません。

魂の入った「MADE IN TAKASAKI」の手ぬぐいとして、末長く扱って頂きたいと願っております。





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この記事へのコメント
職人技の極致ですね、
私自身、タオルより手ぬぐい方が
好きで今でも、風呂上り井戸水で
手ぬぐいを固く絞って体を拭くのが最高
Posted by wasada49  at 2012年06月24日 07:46
>wasada49さん

手ぬぐいのいいところは、畳んでも厚ぼったくならないことですね。
タオルじゃ、ポケットに入れとくという訳にはいきません。

あの長さも実用的です。
包む、縛る、怪我をした時は包帯にもなるし、腕を吊ることもできる、裂けば細い紐にもなる。
ハンカチじゃ、そうはいきません。

ポケットには注染手ぬぐい、っていうのが粋なお洒落じゃないでしょうか。
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2012年06月24日 19:16
上州弁手ぬぐいには、こんな物語があったのですね。
貴重な染めのプロセスを見せて頂き、ありがとうございます。
こんなに手をかけてこそ、あのきっぱりとした美しい発色を得られることがわかりました。
迷道院さんのアイデアと、協力された皆さんと、資金について了解された奥さまに拍手!です。
もったいなくて使えないので、いつまでも眺めて、愉しませて頂きます^^。
Posted by 風子風子  at 2012年06月25日 16:39
>風子さん

拍手を頂戴して嬉しいです!
ほんとに、皆さんのご協力がなければ実現しませんでした。
私は、果報者です。

手ぬぐいは使ってこそのものですが、最近はお部屋のアクセサリーとして使われることが多いようですね。
中村さんには、お洒落な実用手ぬぐいも沢山ありますので、ぜひ一度行ってみて下さい。
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2012年06月25日 22:28
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