2011年06月12日

鎌倉街道探訪記(31)

「山ノ上古墳」の麓の集落が古の「山本宿」であり、そこから「山の上の辻」を通る道が「鎌倉街道」だというのは、異論のないところのようです。

「山の上の辻」までは、寺尾、根小屋、山名の丘陵を通る幾つかのルートがあったと言われていますが、わざわざきつい思いをして山越えをしなくとも、丘陵に沿って山裾を巻くルートも当然あったのではないかというのが、私の当て推量です。

山名八幡宮から山裾に沿って1kmほど歩くと、「山の上の辻」から下りてくる道と交差します。



鏑川方面に行くにはここを左折しますが、ちょっと寄り道をしたくなったので、右折して「山の上の辻」の方へ行ってみることにしました。

150mほど坂を上ると、「山ノ上天水」というおとぎ話に出てくるような名前の公民館があります。

「山ノ上」「天水」も近くの集落の字名ですが、「天水」とは雨水のことです。

昔から水の便が悪く、生活も農業も天からの水に頼るしかない土地だったようです。

眼下に広がる田圃は「天水田圃」と呼ばれ、米を作るには困難な土地でした。

明治三十年(1897)切実な水利問題を解消しようと、五三山(ごさんやま)にトンネルを掘り抜き、「山ノ上」地区を流れる柳沢川の水を「天水」地区の貯水池まで導水するという、大工事を成し遂げました。

当時は土木機械も精密測量機器もない時代、手工具だけで長さ223mのトンネルを素掘りしたのです。
先人の知恵と技術、努力の偉大さには本当に驚きます。

が、そこはやはり素掘りのトンネル。
長い年月に崩落や陥没を繰り返し、危険な状態になってきたということで、平成二年(1990)「山ノ上貯水池」の大改修に併せて、トンネルの改修が行われました。

素掘りだったトンネルと水路はコンクリートで補修され、「山名隧道」と名付けられました。

トンネル出口は個人のお宅の裏にありますが、ご厚意でお庭に入って見させて頂くことができました。

「せっかく来たんだから、トンネルの反対側も見てきたら?」と言われ、行ってみることにしました。

さらに250mほど坂を上ると、「山の上の辻」に出ます。

ここから真っ直ぐ坂を下ると、「山ノ上集落」です。



「集落に入って坂を上りきった辺りだよ。」と教わったのですが、民家へ入る道しかありません。

近くで草刈りをしている方にお尋ねすると、「ここん家の裏なんだよ。」と、ずんずん先に立って案内してくださいました。

この辺だけ、柳沢川がぐるっと山側に迂回していて、そこに水門が設置されています。

正面の穴が「山名隧道」の取水口で、田植えの時期になると左の水門を閉めて、隧道の方に水を流すのだそうです。

「いつもなら、はぁ、水ぅ通してんだけどなぁ。」と、仰ってました。
今年は麦の成長が遅く、刈取りが遅れているのだとか。

水が通ったら、また見に来てみたいなぁと思いました。

【山名隧道トンネル出口】


【山名隧道トンネル入口】





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Posted by 迷道院高崎 at 07:48
Comments(6)鎌倉街道
この記事へのコメント
山名隧道・・・必要にせまられての工事だったのでしょうが、
その土地の地質によって、素掘りでは大変な困難があったのでしょうね。
迷道院さんが紹介されたことで、工事をした人々の思いが伝わるといいですね。
坑口の派手なところが気に入りました^^。
Posted by 風子風子  at 2011年06月12日 09:45
>風子さん

素掘りはすごいですよねー!
それだけ、水の確保が切実だったんでしょう。
実際にはこれでも足らずに、大正15年に鏑川から揚水ポンプで水を揚げる設備も造っています。

山名隧道の出口、誰のアイデアか知りませんが、なかなか凝ってるでしょ?
松浦前市長の書はあまり見たことなかったんですが、結構いい字ですね(^_^)
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2011年06月12日 19:39
新年あけましておめでとうございます。

突然の書き込みですがお許しください。
さて、私こと箕輪棟治(ブログでの名前)は今年より新たなブログを始めました。
故郷(南八幡)にまつわる話や、思い出、徒然なるままに題材としております。
そして色々と情報検索しているうちに「迷道院高崎」様のサイトを訪れたしだいであります。
鎌倉街道、山の上の古墳、八幡様、山名隧道などまさにピンポイントの情報は、非常に参考となりました。
見知らぬ方のサイトへは、書き込みなど経験ないのですが、懐かしくありがたく思い書き記しいたします。

さらなる探索とご健勝お祈り申し上げます。  棟治
Posted by 箕輪 棟治  at 2013年01月04日 11:47
>箕輪 棟治様

新年早々、嬉しいコメントを頂戴し、ありがとうございました!

箕輪様のブログも拝見いたしました。
そこで生まれ育った方でないと書けないような記事に、興味津々で拝見させて頂きました。
故郷を大切に思うお気持ちが、よく伝わってきます。
また、上州弁で書かれた記事も、とても面白かったです。

これからも楽しみにしております。
よろしくお付き合いのほど、お願い申し上げます。
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2013年01月04日 19:34
早々のご返信ありがとうございます。

さすがわ迷道院高崎殿は、相当な探索術も使われるようで。私のブログなんぞどうやって探し当てたのかちんぷんかんぷんでござる。

さて、「手ぬぐいの宣伝文に使わせて頂けないでしょうか。」の件ですが、もともとこちらから生れしものでして。素性は良いはずですから、もう煮るなり焼くなりしてくださいまし。腕のいい料理人にかかれば、人前に出せるほどにはなるかなと・・・ それでは 棟冶
Posted by 箕輪棟治  at 2013年01月04日 22:05
>箕輪棟治様

ご快諾、ありがとうございました。
ありがたく、使わせて頂きます。

このコメントをご覧の皆さまには、何のことか分からないかも知れませんので、箕輪棟治さんの上州弁の記事をご紹介いたします。
ぜひ、ご覧下さい。
http://toutin88.blog.fc2.com/blog-entry-8.html
Posted by 迷道院高崎迷道院高崎  at 2013年01月04日 23:20
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